「農民」記事データベース20010723-502-03

外米輸入には一切手をつけず

需給調整水田(青刈り)分を最初から減反


 ことしの減反面積は五万ヘクタール増えて百一万三千ヘクタール。減反政策が始まった一九七一年(五十四万七千ヘクタール)の二倍近くという途方もない面積です。これだけかと思ったら、もう五万ヘクタール上乗せされていた――農民連の調べで、こんな実態が明らかになりました。

 “もう五万ヘクタール” は、ことしから導入された「需給調整水田」。九九年に農民の強い反対を押し切って導入された「エサ用投げ売り」に続くもの。

 タテマエは、作況が一〇〇を超えた場合、収穫目前の稲を根元から刈り取ってエサ用に発酵(ホールクロップサイレージ)させるための「需給調整水田」を五万ヘクタール指定しておくというものです。これ自体が、丹精して育てて穂をたれはじめた稲を根こそぎ刈り取れという稀代の悪政です。

 政府の責任重大四十県で常態化

 ところが、岩手県などでは「青刈り」予定田が初めから減反に上乗せされ、農水省の配分よりも三%多い減反面積が配分されました。六月十八日に農民連東北ブロックが行った交渉で、東北農政局側は岩手、青森、宮城で上乗せ減反が行われていることを認めました。

 農水省「生産調整推進室」に数日がかりで問いただしたところ、担当官は、渋々全国で約四十の県が同じような対応をし、常態化していることを認めました。

 「制度のタテマエとは違うではないか」と質問すると、「農業団体が主体になってやっていること」と、農協系統に責任を預け、農水省は知らぬ存ぜぬという態度です。

 これは、徹頭徹尾、外米輸入を「聖域」にするやり方です。

 外米聖域にするバカげたやり方

 第一に、二〇〇〇年の外米輸入は十五万ヘクタールに相当します。外米輸入をやめれば、ことしの減反拡大五万ヘクタールと「需給調整水田」五万ヘクタールを中止してもおツリがくるほど。外米輸入を「聖域」にし、日本の農家には、合計百六万三千ヘクタールの減反を押しつける――いったい、なにが「聖域なき改革」でしょうか!

 第二に、国産の古米や青刈り米を動物の「エサ」に回しながら、外米は人間様が食う主食・加工・援助に回す――これも“外米聖域”のバカげたやり方です。

 しかも、百万ヘクタールを超える大減反の結果、日本国民が食べる新米不足は確実です。初めから大幅な新米不足を計画したのでは、国民の反発を食うというので、不作の場合には主食用に回し豊作の場合には「青刈り」してツジツマを合わせるのがタテマエだったはず。

 今回明らかになったのは、こういうタテマエもかなぐり捨てて、不作になったら、国民には外米と古米を食わせ、家畜には“新米”(新稲の発酵飼料)を食わせるという逆立ちした姿。

 初の日米首脳会談で小泉首相は、沖縄で起きた米兵による女性暴行事件について「ギスギスしたことを言うな」と言ってのけ、地球温暖化防止に対するアメリカの妨害に同調する姿勢を示しました。

 小泉首相は「ライオン」がお気に入りのニックネームのようですが、基地も環境も外米もすべて「聖域」にするのでは、国民にはライオンの牙をむき、アメリカの前には“借りてきたネコ”ではありませんか。

(新聞「農民」2001.7.23付)
ライン

2001年7月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2001, 農民運動全国連合会