参議院選挙農の現場から 日本農業の復権を「小泉改革」は農業崩壊への道
七月二十九日の投票が目前に迫った参議院選挙は、二十一世紀の政治の流れを決める大事な選挙です。農家はどう選択するのか――各地の声を追いました。
外米輸入やめるどころか推進「減反を強制する政治はもうごめん」――いま米価暴落と減反の拡大に一番苦しんでいるのは、政府が奨励してきた大規模農家です。「外米を輸入しながら減反を押し付けてきた自民党農政を変えたい」というのは、農家の誰もが思うこと。しかし外米輸入をストップするどころか、中国米を開発輸入する商社代表を立候補させる小泉・自民党。「非効率部門を淘汰する」という小泉流の「農業構造改革」とは、一俵八百円の中国米と競わせ、負ける農家はやめてもらうというものに他なりません。
不良債権処理で失業者100万人も「職安に行くと、知り合いの農家とよく出会う」というほど冷え込んだ農村の経済。首を切られた兼業農家が自殺する事態も生まれています。景気回復は、国民全体の願いです。ところが「小泉改革」の最大の目玉である「不良債権の最終処理」は、百万人規模の失業を新たに生むと、民間のシンクタンクが警告するもの。国民には耐えがたい痛みを押付け、大銀行の救済には惜しげもなく税金を使って甘やかす――これが「小泉改革」です。 「セーフガードの本発動を」「三品目以外にも拡大してほしい」と、各地で請願があがっています。しかし、「あくまで暫定的なもの」「暫定だけで終われば一番いい」と切って捨てるのが小泉首相と武部農相です。 六百六十六兆円という途方もない金額に膨れ上がった国と地方の借金をどう解決するのか――小泉内閣は「川辺川」や「諌早」などムダな大型公共事業を継続する一方で、消費税の大増税や相続税の納税猶予制度の廃止をたくらんでいます。 日本農業破局のシナリオを描く小泉・自民党には二十一世紀の政治は任せられません。自民党農政を根っこから変え、「農業と農山村の復権」を実現する政党を見定めましょう。
四割超える減反はもうゴメン兵庫県 稲作(15・6ヘクタール) 坂越 次夫さん昨年は三八・六%の減反だったのが、今年は四〇%を超えている。昨年までは三年に一回のローテーションでやっていたが、四〇%以上になると、そのローテーションも乱れてしまう。一度荒し作りをしたら、田んぼを元に戻すのには三年もかかる。機械代や肥料代は上がる一方なのに、米価は下がるばかりだ。機械は一千万円もかかっており、ほんまに苦しい。先日、全国の稲作経営者会議に参加したが、大規模の稲作農家はどこでも大変苦しい状況だ。 平成五年に希望退職をして専業農家になったが、まったく先の見通しがつかめない。四〇%も超える減反を強制する政治はもうごめんだ。せめてサラリーマン並みの収入を保障してもらいたいものだ。
景気悪化の小泉改革に参院選で福島・須賀川農民連事務局長 丹治 実さん今年四月、十五年勤めた会社からリストラされた。新しい仕事を見つけなければならない。今よりさらに景気を冷え込ませる「小泉改革」はごめんだ。大銀行には七十兆円も税金を注ぎ込む一方で、私らが勤めていたような中小零細企業は無情に切り捨てる。それが小泉内閣が進める不良債権処理だ。 農村の経済は、農業破壊と不況のダブルパンチを受けている。働いていた会社は、十年前は十五人いたが、辞める時には六人になっていた。そのほとんどが兼業農家だ。職安に行くと知り合いの農家とよく出会う。 二ヘクタールの田んぼと畑があるが、米価の暴落で、とてもそれだけでは食っていけない。新聞「農民」の号外やPR版が、まわりの農家によく読まれていて、話になる。これを力に、米の自由化を進め、セーフガードも暫定で終わらそうとする小泉・自民党に参院選で一泡吹かせたい。
自民勝てば輸入制限打ち切りに茨城県岩井市 農業委員 藤野 稔さん岩井市は、夏ネギでは埼玉・深谷市に次ぐ産地、レタスも全国有数の出荷量です。「セーフガードを本格発動してほしい」「三品目以外にも拡大してほしい」と、農家の誰もが切実に願っています。六月の農業委員会の後、参院選で自民党から出馬する福島啓史郎(元農水省食品流通局長)後援会の入会申込書が配られました。これをきっかけに、保守系の農業委員も含めて「小泉首相がやろうとしていることは農業つぶしだ」「自民党は参院選で勝てば、セーフガードを暫定で打ち切るつもりだろう」という声が次々に起こりました。 農業をギリギリまで追いつめてきたのは自民党です。このことを肝に銘じて、農家の要求を実現する政党を選びます。
農水大臣の地元で後継者が離農北海道斜里町 畑作農家 宮内 知英さん知床半島の付け根に位置する斜里郡三町では、「緑ダム」を共通水源とする畑地かんがい事業の計画変更手続が進められています。事業費総額千三百二十億円、負担額三千万円を超える農家が十三戸。この大型土地改良事業が畑作農業にどんな役割を果たすのかを考えようと開かれた「緑ダムシンポジウム」には、町内外から百三十五人が参加して熱気に包まれました。 自民党農政とそれを助ける公明党による馬鈴薯やテンサイ、小麦などの大幅価格引き下げのもと、若い農業後継者が離農を余儀なくされています。 武部農水大臣は、私たちが住む斜里町出身です。その大臣の地元で、土地改良事業の事業対象者三百二十七人中、同意しているのはわずか五十二人。これを受け、町長は「事業継続は断念せざるをえない」との意向を表明しました。 「農業経営の法人化、外国との価格競争に負けない農業をめざす」という武部農水大臣の言葉に「だいぶピントがはずれている。あんた方こそしっかり頑張ってくれ」これが地元農業団体幹部の声です。
価格保障掲げる日本共産党を新潟・西蒲農民連事務局長 今井 健さん小泉人気で農業が切り捨てられてはたまりません。農業の「構造改革」は、今でも冷えきっている農村経済をいっそうひどくするだけです。「米が余るから減反」「価格が下がるから減反」と言って、農民をだまし続けてきた自民党。ここを「改革」するならともかく、農産物の価格支持政策を投げ捨てて、農業は非効率な産業だといってバッサリ切り捨てるとんでもない中身が「小泉改革」です。これは農業の「破壊」以外の何ものでもありません。 「農業・農山村の復権を!」という農民連のスローガン。この思いを実現するために、米を「自由化」の対象からはずすことを国際舞台で堂々と主張すること、農業予算の使い道を価格・所得保障中心に改めることを公約に掲げる日本共産党を応援します。
果物にもセーフガードを和歌山県 柑橘(1.5ヘクタール) 蓬台 雪子さん昨年、紀ノ川農協の班会でセーフガードの発動を求める署名集めを頼まれたのがきっかけで、署名用紙をいつも持ち歩き、多くの人から署名をいただきました。みかんなど柑橘は安いのが当たり前と思っていましたが、タマネギなど他の野菜も安いことがわかり、これは大変と勉強しました。安い原因は、政府が輸入農産物をどんどん入れるからであり、政治とは無関係ではないことを知りました。 暫定セーフガードが発動されましたが、その反発も強まっています。しかし、本格的な発動とともに、他の品目にも広げてほしい。農業と農民のことを本当に考えてくれる政治が求められていると思います。
改革言うならダム中止すべき川辺川利水訴訟原告団長 梅山 究さん霞ヶ関や永田町で改革の風が吹いていると言われても、その風が九州熊本の片田舎には一向に吹いてこない。政治家の目はヒラメだと言いたい。下のほうが見えていない。目のつけどころを変えることなしに改革はできない。「構造改革」をやるなら、諌早湾干拓事業や川辺川ダム建設による利水事業を中止するべき。簡単なことだと思う。こんな簡単なことができないで何が改革かと言いたい。
相続税納税猶予廃止検討は一大事千葉県船橋市 畑(1.3ヘクタール) 金子 一雄さん昨年七月の政府税制調査会「中期答申」は、相続税の納税猶予制度の廃止を検討課題に掲げました。これは都市農業にとって一大事です。私は、九七年に相続が起こり、相続税は五億円にもなりました。それで、農地の相続税は納税猶予を受け、家屋などにかかる分は、畑の一部を物納することにしました。猶予制度がなければ、どれだけ畑を失っていたか。 自民党は、政権が変わるたびにますます悪くなっていると思います。農家から相続税で土地を取りあげて、開発するゼネコンや銀行をもうけさせています。 相続税の一番の問題は、農地を農業の収益性で評価しないことです。それを改めるとともに農家が農業で食っていける農産物の価格を支持する政治を望みます。
(新聞「農民」2001.7.23付)
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[2001年7月]
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