「農民」記事データベース20010716-501-01

JR東日本グループ 日本レストランエンタープライズ

外米弁当輸入・販売

脱法行為の低関税、先鞭つける

 「脱法行為で外米弁当を輸入するのはやめろ」――。JR東日本の子会社が、輸入弁当を販売しようとしている問題で、農民連は、(株)日本レストランエンタープライズ(NRE)に対して「中止を求める」要請文を送るとともに、同社への指導を求めて、七月五日、農水省と交渉しました。


 弁当を「魚肉調製品」で輸入

 NREが、アメリカ・カリフォルニアに建設した工場から輸入した「鶏ごぼう照焼き」「牛すき焼き風」「鮭ちらし」の冷凍弁当。七月十七日から首都圏の駅構内などで販売されます。

 問題の一つは、同社がこれを「肉魚調製品」として輸入していることです。通常の米の輸入には一キロ三百四十一円(四九〇%相当)の高関税がかかりますが、「肉魚調整品」の名目にすれば六〜二一・三%。

 肉魚の含有量が二〇%を超えれば「肉魚調製品」ですが、これまでの輸入実績は、イカ飯やピラフなど、見た目にも肉魚の調理品か、米とその他のものを分けられないもの。「弁当なら米だけを分離できるので『米調製品』として高い関税をかけることもできる」というのが専門家の見方です。

 米が主体の弁当を「肉魚調製品」と言いはって低関税で輸入――公共性が高いJRグループによるモラルを欠いた行動は許されません。NREの菊地武広報部長は、本紙の取材に対して、「そこをつかれると痛い」と本音をポロリ。

 しかも、NREの弁当輸入プロジェクトがスタートしたのは三年前。カリフォルニア工場は、昨年着工し、今年五月に完成しました。弁当輸入は計画的な「犯行」、「確信犯」なのです。

 農水省も容認 抗議の声殺到

 ところが、農水省の見解は「低関税での輸入が可能。違法行為ではない」(食糧庁加工食品課の和泉補佐)と、耳を疑うもの。交渉では、「こんなサギまがいのやり方を許すのか」「もっと打つ手があるはずだろう」と、激しい抗議の声が殺到しました。

 NREのこの一件を許せば、次々と輸入申請が出されることは火を見るより明らか。仮に中国で“激安”の冷凍食品と黒龍江省の米を結ぶ工場を建てたら、いったいどうなるのか―。

 NREにポスター貼らせる自民党の抗議はポーズだけ
 しかも、NRE本社ビルにはJR出身で自民党の現職参院議員中島啓雄氏のポスターが。自民党はJRの輸入弁当に抗議するポーズをとっていますが、これでは“泥棒”を身内に抱えて“泥棒をとりしまれ”と言っているようなもの。

 海外進出を自らPR

 NREが販売する弁当のネーミングは「オーベントー(O-bento)」。一日一万食(当面は五千食)の販売目標を立てています。「“オー”は、オーガニック(有機)の意味」だそうで、「有機」認証を受けた「アメリカ産アキタコマチ」(供給元はランドバーグ社)を使っていることを、最大の売りにしています。

 もっとも、他の食材は認証を受けておらず、ナチュラル(自然な)野菜、ナチュラル牛肉などと呼んでいます。ゴボウ、キヌサヤ、シイタケなどの食材は中国産かと思ってたずねると、「アメリカ産」という答。ただし「世界中を飛び回ってやってくる」(NREの菊地広報部長)とも。中国などで一次加工した食材を、他の業者から購入するということのようです。

 こうした食材を組み合わせて弁当にするのが、NREが九百六十万ドル(約十二億円)かけて、カリフォルニア州フェアフィールド市に建てた工場。従業員は約五十人。そのために同社は、現地法人「NREワールドベントー(株)」まで設立するという力の入れようです。

 NREは、輸入弁当の発売にあたって、「『弁当革命』発信。食品の品質・安全性に責任を持つため、自ら海外へ進出」とPRしています(同社ホームページ)。同社がこれまで、駅構内の売店や車内食の独占的地位を利用して、高く売りつけてきた「革命」前の弁当は、“品質が悪くて危険”だったのでしょうか。

 NREの親会社であるJR東日本の大塚陸毅社長は、弁当輸入の理由について「有機米を、年間三百トン調達する必要があったが、国内では生産量が二十トンしかなかった」と説明しましたが、とんでもありません。

 ファーストフードとの価格競争がねらい

 菊地広報部長は本紙の取材に対して「最近は、安いファーストフードや牛丼に押されて八百円の幕の内弁当がさっぱり売れない。最高時には二十五万食あった売上げが、十二万食に落ち込んでいる。そのへんの事情も分かってほしい」と、さかんに弁明していました。安いアメリカ産の原料を使い、ファーストフードと価格競争するのが本当のねらいで、「有機」は、あとからつけた口実にすぎないのです。

 「旅を味わい楽しむ大切なもの、それが駅弁」という同社のキャッチフレーズ。カリフォルニア米を食べて、“カリフォルニアを旅した気分になれ”とでも言うのでしょうか。

 けっきょく「弁当革命」・ワールドベントー戦略の行き着く先は、国内産地と四十六あるというNREに納めている地方の弁当屋の切り捨てに他なりません。

 国民をあざむくことは許せない

 かつて農民連食品分析センターは、「有機」認証のある豆腐から残留農薬を検出しました。「有機」の名で、国民の「食の安全」に対する関心をあざむくことは許されません。

 食糧庁のアンケートでも九一%の国民が「外米は買いたくない」と答えています。「県内産一〇〇%の『彩たま弁当』が毎日完売で好評」だそうですから、こういう方向でこそ、「安いけど危険な」六十五円バーガーと競争すべきです。

 儲けるためなら何でもやる商社や大手の加工食品企業の開発輸入戦略。公共性が高いJRグループが、この戦略を引っぱる牽引車になることなど、絶対に許されません。

(新聞「農民」2001.7.16付)
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2001年7月

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