「農民」記事データベース20010709-500-20

演劇

岡部企画「精霊流し」「秋日和」

戦争体験世代へ問いかけ


 岡部企画プロデュースは十周年・三十回記念公演として、東京・新宿の紀伊国屋ホールで「精霊流し」と「秋日和」の二本を上演します。ともに岡部耕大の作・演出。戦争を体験した世代が、いま語るべきものはなにかを問いかけた作品。

 「精霊流し」(写真)〈写真はありません〉は一九八〇年に発表されて以来、公演を重ね名作の評判を得ています。「おばば」と「女」だけの二人芝居。舞台は九州・長崎の松浦。東京で不倫の恋に破れた「女」が死に場所を求めてふるさとに戻ってきました。自殺未遂で収容された先が「おばば」の営む古びた旅館。「おばば」は終戦の日の八月十五日、不義の子を死なせた思い出に生きています。「おばば」と「女」の間にかわされる、それぞれの思いをこめた絶妙な会話が交わされていきます。

 今回は阿部百合子と中村真知子の初顔合わせ。「おばば」の阿部さんは昨年の地方公演に続いての出演。「これまで自分のなかではやったことない骨太なおばあさんですね。戦争を生き抜き松浦に住み、女の強さを持っています。岡部さんが描いたメッセージが伝えられたらいいなあと思う」と語ります。「女」の中村さんは初出演。けいこ場の本読みから涙を流してしまうほどの熱の入れようでした。

 「秋日和」は新作。作者が実体験を踏まえて書き上げた一時間余の人間ドラマ。三年前に父親を亡くしたのをきっかけに誕生した作品。一九六八年の秋、東京では国際反戦デーがあり、松浦では“おくんち”が賑わいをみせていました。東京で演劇活動を始めた息子、その息子を拒絶する父と母、そして夫婦になった男と女の苦い過去などが、秋の一日のなかに集約されています。淡々と積み重なっていく微妙なせりふ展開は、この舞台を味わい深いものにしています。出演は山下清美、加藤佳男ほか。

(鈴木太郎)

 *7月4日〜9日、東京・紀伊国屋ホール。連絡先=岡部企画、電話044(933)9754

(新聞「農民」2001.7.9付)
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2001年7月

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