「農民」記事データベース20010709-500-10

農水省のOBが語る

利権の温床! 公共事業

露骨な地位利用、政界進出の“道具”に

 右手で日本農業を危機に追い込み、左手で利権をむさぼる自民党――。その利権の温床になっている公共事業の問題について、農水省のOBに語ってもらいました。


 高級官僚が…

  今度の参院選で、自民党の比例区から福島啓史郎・元食品流通局長と段本幸男・元中国四国農政局長の二人の農水省OBが出馬する。僕のところにも、ある農政局長から「よろしく」との電話があった。「大変だね」と言ってやったら、「仕事ですから」と言っていたよ。

  自民党比例区の二議席は、農水省OBの指定席だ。一人は事務系キャリア、もう一人は構造改善局の技官幹部。その構図が綿々と続いている。構造改善局OBの段本氏は全国土地改良事業団体連合会(全土連)の顧問に天下った。全国の土地改良区とその政治連盟を使って、票もカネも吸い上げている。

  そのために必要なのが、一兆四千億円にのぼる農水省の公共事業予算だ。最初に予算ありきで、それを消化するために、ずいぶんムダな事業をやった。中止になった羊角湾(熊本)の干拓事業では、何億円もかけて海に投げ込んだ石の後始末をめぐって、農政部と総務部が責任のなすり合いだ。

 予算使い切れ

  静岡の静清庵地区でも一度も使っていないポンプが放置されている。業者をもうけさせるだけだと分かつていても、できるだけ大きな予算を使い切るのがいい仕事という世界だ。事業がポシャりかけた時、「何としても予算を使い切れ」とどやされたよ。

  土地改良事業は、農家の発意によって始まるのが建前だが、実際は「玉出し」と言って、県や市町村を追い立てて無理やり事業を作るのが当たり前。そのうえ、土地改良法には、国や県が事業をやめる規定がない。国や県がやる事業に間違いはないということだ。だから諌早のように国民的な非難が集中してもやめようとしない。

  そういえば松岡利勝・元農水副大臣は、諌早の事業に関わる業者からカネを還流させているというもっぱらのうわさだ。あの六兆百億円のウルグアイ・ラウンド農業対策予算で強くなったのは農業ではなく政治家だというのもよく言われている。

 負担は農家に

  土地改良事業によって生産性が上がるのは、農家にとっての要求だが、一度始まった事業は、必ずと言っていいほど途中で事業費がふくれ、農家の賦課金も高くなる。農産物価格が下がり、離農が増えて、賦課金をかなり滞納している土地改良区もある。

  農家もバカじゃない。右手で日本農業を危機に追い込み、左手で利権をむさぼる自民党にしっぺ返しが来る日も近い。

(新聞「農民」2001.7.9付)
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2001年7月

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