本の紹介『北方の農民』第1号〜第13号復刻版岩手県・小繋山入会権めぐる山村農民の闘いの記録
小繋(こつなぎ)事件は、岩手県盛岡市から北方約五十キロにある二戸郡一戸町小繋という地域にある小繋山の入会(いりあい)権をめぐり、祖父母、父母、子、孫の三代・四代にわたり、一九一七(大正六)年から始められた一連の訴訟事件です。 小繋山は江戸時代、南部藩の藩有林でしたが、部落の入会山でした。農民は山に入り、建築用材や薪などをとっていました。明治初年の地租改正で名目上は地元の有力者の所有になりましたが、実質上は部落全員の共同所有として、入会慣行が続けられていました。 ところが、その所有者が南部馬の売買に失敗、他村の三人に売り渡し、さらに彼らは小繋とは関係のない県外の軍需商人で金儲けをした人物に譲渡。一九一五(大正四)年に大火で小繋部落は全焼。住民は自宅再建のために小繋山に入って用材を伐り始めたところ、盗伐で逮捕され、罰金を言い渡されました。地主は部落に巡査を置き、山番を雇い、部落住民と衝突させ入会権を消滅させようと狙ってきました。住民は弾圧に抵抗しながらも生活を維持するために入会利用を続け、大正六年に法廷闘争を始めました。 住民にとって、小繋山は唯一の生活財産で、これを奪われることは死を意味するほどで、農民の生存権を守るうえでも重要なものでした。半数が地主側につき、残りの人たちは入会権を主張し、たたかい続けました。そのたたかいは三代、四代にも引き継がれてきました。そのたたかいが『北方の農民』として一九六〇年の第1号から七九年の第13号まで発行され、記録されてきました。 山村の農民が、弁護士や研究者、大学院生らの支援も受けながら自らの生活を守るために自覚し、権利を守るために立ちあがっていく姿が克明にわかります。
頒価一冊・三千五百円。 (N/新聞「農民」2000.9.25付)
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[2000年9月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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