“農民無視、許さない”熊本・川辺川利水訴訟/不当判決に抗議農水省前 たたかい続ける決意新たに
「清流川辺川を守ろう」のノボリ、「農水省は農民の声を聞け」とシュプレヒコール……。熊本・川辺川利水訴訟判決日の九月八日、原告・弁護団ら三十人以上が上京し、農水省前などで終日行動にとりくみ、構造改善局長に事業の中止を直接申し入れました。 この日、熊本地裁が言い渡した判決は、原告敗訴の「不当判決」。しかし、原告の農民らは、「判決のいかんに関わらず、農民の気持ちを踏みにじって事業を続けることは許されない」(梅山究・原告団長)と、たたかい続ける決意を新たにしました。 「輸入の急増で価格が暴落しているなか、高い水利料を払ったら何を作っても割りが合わない。今でも水は足りているし、事業は必要ない」(原告団副団長の茂吉隆典さん=56)。 川辺川利水訴訟は、国営土地改良事業の対象農家の半数を超える約二千百人が原告(補助参加を含む)に加わり、「事業はいらない」と訴えています。「農家がいらないというものを、なぜ農水省が造るのか」、そのことが問われています。 しかし、判決は「行政庁の広範な裁量に任されるべき」などと述べ、原告の訴えを棄却。板井優弁護団長は「判決は行政におもねる司法の自殺行為と言うべきもの」と断じました。 「『不当判決』の垂幕を持っている自分が信じられなかった。四年半の裁判で、農家が必死にしゃべったことが全然伝わらなかったと思うと悔しい」という原告団副団長で農民連会員の東慶治郎さん(49)。原告みんなの思いです。 同時に判決は、裁判の中で原告が訴えてきた「死亡した人の同意署名がある」「タダだと偽って押印させた」など、農水省のデタラメな同意取得の実態を大筋で認め、白日のもとにさらしました。「農水大臣は、判決で指摘された事実を深く反省し、同意の取り直しをすべき」(原告・弁護団の声明)です。しかし、渡辺好明構造改善局長は「一貫性が失われる」と、これを拒否。何がなんでも事業にしがみつくという態度をあらわにしました。 「だまされた。民主主義の問題として、一生かかってもたたかい続ける」(大石一男さん、農民連会員=72)。原告の多くは、仮に国営事業が強行されても、県・団体営の事業には同意しない固い決意です。そうなれば、基幹水路はできても、農地に水が供給されない「壮大なムダが残る」(国宗直子弁護士)ことになります。 午後三時の農水省前での集会では、「公共事業チェック議員の会」の中村敦夫会長(参院議員)をはじめ、民主党、日本共産党、社民党の各党議員が激励。支援者ら百六十人が集まって開かれた夜の集会では、石黒昌孝・農民連事務局次長が連帯してたたかう決意を表明しました。また千葉県農民連からは、北総中央用水に反対している石井健蔵さんらが駆けつけ交流しました。
(新聞「農民」2000.9.25付)
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[2000年9月]
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