豊かな森林破壊するスキー場開発やめよ青森県岩木山 地元農家が訴訟
青森県西津軽郡鯵ケ沢町、かつては津軽藩の御用港が置かれて賑わっていた農漁村に、スキー場拡張の問題がのしかかり、農業用水の不足が心配されています。 (株)コクドが経営する鰺ケ沢スキー場は、岩木山の北西斜面を利用して平成元年の冬に開業。以降、拡張を重ね、その他にもプリンスホテル、ゴルフ場と三点セットをそろえ、総面積は百町歩を超えています。これらの開発により、岩木山の森林を水源としていた徳明川、湯船川が深刻な水不足に侵され、米とリンゴに深刻な影響を与えています。
農家七百世帯が深刻な水不足にこのような現状にもかかわらず、一昨年前からさらなるスキー場の拡張問題が浮上。現在のスキー場の東部を十町歩ほど新たに拡張し、県で誘致した二〇〇三年の冬季アジア競技大会に間に合わせようというもので、鳴沢川源流の尾根の森林を伐採する計画です。町当局は、十人の追加雇用が見込めると言いますが、それも冬季だけの話。鳴沢川流域で水不足に悩まされながら農業を営む農家は、約七百世帯もあります。「森林を伐採されては生活と営農に支障をきたす」と地元農民は団結し、去年の秋から反対運動を展開。その先頭の一員となっているのが、西北五農民組合の井上祐一さんです。井上さんは語ります。「水利権は、農家の生活と人権に係わる重要な問題。今まで出稼ぎで、各地の自然破壊を目の当たりにしてきた。今よりも水不足となり、土石流災害の危険性が大きくなるのは明らかだ」。地元の農家を駆け回り、県や農水大臣あてに陳情書、要望書、署名を幾度と提出しても、返答すら返ってこない状況に一躍奮起。今年の三月末には工事差し止め請求訴訟を起こしました。にもかかわらず、今年の六月末には東北森林管理局から国有林の使用許可が出されてしまい、七月四日に工事に入るという状況です。
行政の許可理由に居直る事業者「藩政時代に農民が植林したという記録もある森林。最近では、奈良県吉野山のゴルフ場建設差し止め訴訟では住民が勝訴した判例もある。世論と運動の盛り上がりでなんとしても中断させたい」と井上さんは二次提訴と工事中止にむけた仮処分手続の調整に追われています。地域の農民は広範な市民と連携し、七月十三日、十六日と二回にわたり抗議行動を展開。コクドに要求書を突きつけましたが、事業者は「行政が許可したから」と居直り、工事を続行する構えでいます。企業のエゴを地元権力者のエゴと結びつけ、あたかも地域住民の要望かのように進められているリゾート開発。その背景に切り捨てられようとしている農家の悲痛な叫びがあります。
連絡先「鳴沢川を守る会」事務局、小沼方(電話〇一七三―七二―七〇〇八) (西北五農民組合 葛西拓美)
(新聞「農民」2000.9.11付)
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[2000年9月]
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